ファッションアイテムとしてだけでなく、過酷な環境下での使用を前提とした「本物の道具」としての腕時計に惹かれる方は多いのではないでしょうか。
今回ご紹介するMWC(ミリタリーウォッチカンパニー)のG10BHは、1980年代に英国軍が採用したモデルの直系であり、現代の技術でアップデートされた、無骨で堅牢、そして実用性に特化したデザインの本格ミリタリーウォッチです。
この記事では、軍用時計として生まれ、そのDNAを現代に受け継ぐG10BHの魅力を、スペックや歴史、活用シーンまで徹底レビューします。
「MWC G10BH」の概要
MWC G10BHは、スイスのミリタリーウォッチ専門メーカーであるMWC(The Military Watch Company)が製造する、クオーツ式の腕時計です。
1980年代に英国軍をはじめとするNATO加盟国で広く使用された「G10ウォッチ」の仕様を色濃く受け継いでいます。
軍用時計に求められる視認性、耐久性、信頼性を高いレベルで実現しながら、現代の基準に合わせてサファイアクリスタル風防や長期寿命バッテリーといった改良が加えられています。ケースバックにはバッテリーハッチを備え、戦場でも容易に電池交換ができるという実用本位の設計思想が貫かれています。
ミリタリーウォッチの基本形とも言えるシンプルで飽きのこないデザインは、カジュアルな服装からジャケットスタイルまで幅広くマッチし、多くのファンを魅了し続けています。
項目 | スペック |
---|---|
耐久性 | 316Lステンレススチールケース、サファイアクリスタル風防 |
防水性 | 5気圧(50m/165ft)防水 |
耐磁性 | 不明 |
視認性 | スーパールミノバ夜光 |
操作性 | ねじ込み式リューズ |
ムーブメント | Ronda 705/715(クオーツ) |
動力の持ち時間 | 約60ヶ月(約5年) |
素材(ケース・裏蓋・風防) | 316Lステンレススチール / 316Lステンレススチール / サファイアクリスタル |
ケース径 | 40mm(リューズ含まず) |
ケース厚 | 11.5mm |
重量 | 60g |
ベルトの種類 | 20mm NATOストラップ |
- イギリス軍やNATO軍に正式作用されたモデルの派生形
- シンプルなデザインで、機能性が重視されている
MWCの腕時計を採用する政府機関や部隊
MWCは、世界中の軍隊、警察、政府機関などに腕時計を供給している実績があります。公式サイトによると、特定の部隊名は機密情報として公開されていませんが、軍の調達部門や政府機関が主要なクライアントであることが明記されています。
特筆すべきは、同社のG10モデルの中に、英国国防省に供給されていることを示すNATOストックナンバー「6645-99-472-3228」が付与されたモデル「G10/100UKG」が存在することです。これは、MWCの腕時計が正規の軍用装備品として採用されている信頼の証と言えます。
生産国とその歴史的背景。
MWCは、1974年にスイスのチューリッヒでWolfgang Obrigheimer氏によって設立されました。
スイスといえば高級腕時計の聖地として知られていますが、MWCは華美な装飾を排し、軍用時計としての機能性と信頼性を追求する道を選びました。
設立当初から、ベトナム戦争などで使用された過去の軍用時計の復刻や、現代の軍隊の要求に応える新しいモデルの開発を手がけています。G10BHのデザインの源流である英国軍のG10ウォッチは、1980年代にMWCの競合であるCWC社などが製造していましたが、MWCはその後継モデルや独自改良モデルを多数生産し、ミリタリーウォッチ市場で確固たる地位を築いています。
MWC G10BHの特徴と機能
- G10BH1224(日付表示付きの基本モデル)
- G10BH1224PVD(ケースにブラックPVD加工を施したステルスモデル)
- G10BHAUTO(ムーブメントを自動巻きに変更したモデル)
MWC G10BHは、軍用時計の伝統を受け継ぐ堅牢性と実用性が特徴です。
心臓部には信頼性の高いスイス製クオーツムーブメントを搭載し、約5年間の長いバッテリー寿命を実現。風防には傷に強いサファイアクリスタルを採用し、50m防水性能と合わせてタフな環境下での使用に応えます。文字盤には12時間表示の内側に24時間表示も併記され、夜光塗料スーパールミノバにより暗闇での視認性も確保されています。
項目 | スペック |
---|---|
耐久性 | 316Lステンレススチールケース、サファイアクリスタル風防 |
防水性 | 5気圧(50m/165ft)防水 |
耐磁性 | 不明 |
視認性 | スーパールミノバ夜光 |
操作性 | ねじ込み式リューズ |
ムーブメント | Ronda 705/715(クオーツ) |
動力の持ち時間 | 約60ヶ月(約5年) |
素材(ケース・裏蓋・風防) | 316Lステンレススチール / 316Lステンレススチール / サファイアクリスタル |
ケース径 | 40mm(リューズ含まず) |
ケース厚 | 11.5mm |
重量 | 60g |
ベルトの種類 | 20mm NATOストラップ |
- サファイアクリスタル風防:ダイヤモンドに次ぐ硬度を誇り、傷がつきにくくクリアな視認性を保ちます。
- 50m(5気圧)防水:雨や手洗いといった日常生活での水濡れはもちろん、軽い水仕事にも耐える防水性能。
- バッテリーハッチ:ケース裏蓋に設けられた電池交換用のハッチ。特殊な工具なしでバッテリー交換が可能です。
- 長期寿命バッテリー:約60ヶ月(5年)という長いバッテリー寿命を誇り、頻繁な電池交換の手間を省きます。
- スーパールミノバ夜光:光を蓄えて発光するタイプの夜光塗料で、夜間や暗所での時刻確認を容易にします。
- 固定式ストラップバー:ベルトを取り付けるラグが、一般的なバネ棒ではなく固定式のバーになっており、頑丈でベルトが外れにくい構造です。
戦場の知恵「バッテリーハッチ」がもたらす究極の実用性
ミリタリーウォッチならではのユニークな特徴が、ケース裏蓋にある「バッテリーハッチ」です。
これは、コインなどを使って簡単に開閉できる電池交換用の蓋のことで、戦場などの特殊な環境下で、時計修理の専門家や特殊な工具がなくても迅速に電池交換を完了させるための工夫です。
現代の日常生活において、ユーザー自身がこの機能を使う機会は少ないかもしれません。しかし、このような細部にまで「実用性を第一に考える」という軍用時計の設計思想が宿っている点は、ミリタリーファンにとって非常に魅力的なポイントと言えるでしょう。
また、通常の腕時計のように裏蓋全体を開ける必要がないため、交換時に内部の機械に埃や湿気が入り込むリスクを低減できるというメリットもあります。まさに機能美を体現したディテールです。
傷を寄せ付けない「サファイアクリスタル風防」の安心感
腕時計を日常的に使用していると、知らないうちに風防(文字盤を覆うガラス)に細かい傷がついていることがあります。特にアウトドアや作業現場など、ハードな環境で使うならなおさらです。
G10BHに採用されている「サファイアクリスタル」は、非常に硬い素材であり、日常生活で遭遇するほとんどの物との接触で傷がつくことはありません。これにより、いつでもクリアな視界で時刻を読み取ることができ、時計の美観を長く保つことができます。
ミネラルガラスやアクリル風防を採用した他のミリタリーウォッチと比較して、G10BHが一段上のスペックを備えている点であり、長く愛用したいユーザーにとって大きな安心材料となります。コストは高くなりますが、それに見合うだけの満足感と信頼性を提供してくれる重要な特徴です。
ミリタリーウォッチの標準装備「NATOストラップ」と固定式バー
G10BHには、引き通し式の「NATOストラップ」が標準で装備されています。これは元々、英国軍が規定した装備品で、一本の長いベルトを時計の裏側に通す構造になっています。
この構造の最大のメリットは、万が一、時計のラグ部分のバネ棒が片方破損しても、もう片方が繋がっていれば時計が腕から脱落するのを防げる点です。
さらにG10BHでは、この思想を徹底し、そもそも破損の可能性があるバネ棒を廃止し、ケースと一体化した「固定式ストラップバー」を採用しています。これにより、ベルトの取り付け部分は極めて頑丈になり、時計本体を失うリスクを最小限に抑えています。
また、工具を使わずに簡単にストラップを交換できるため、気分や服装に合わせて色や素材を変えて楽しむことができるのも、NATOストラップの魅力の一つです。
「MWC G10BH」と他モデルの腕時計との比較
同一ブランドの他モデルとの比較
MWCのG10シリーズには、今回紹介しているG10BH以外にも、多様なバリエーションが存在します。例えば、防水性能を100mや300mまで高めたダイバーズウォッチ仕様のモデルや、ケース素材に軽量で堅牢なチタンを使用したモデルなどがあります。

これらのハイスペックモデルは、より過酷な環境での使用を想定しており、価格もG10BHより高価になります。ムーブメントも、G10BHが搭載する標準的なクオーツの他に、バッテリー寿命が10年に及ぶ高性能リチウム電池を搭載したクオーツムーブメントや、機械式の自動巻きムーブメント、さらにはクオーツの精度と機械式の運針を両立したハイブリッドムーブメントを搭載したモデルも選択可能です。
G10BHは、これら数あるG10シリーズの中で、軍用時計のオリジンである「G10」の基本スペックを忠実に守りながら、サファイアクリスタル風防といった現代的な改良を加えた、最もバランスの取れたスタンダードモデルと位置づけられます。初めてMWCの時計を手にする方や、オリジナルのG10の雰囲気を味わいたい方にとっては、最適な選択肢と言えるでしょう。より高い防水性や特殊な機能を求める場合は、他の上位モデルを検討する価値があります。
他社の類似モデルとの比較
MWC G10BHの比較対象として最もよく挙げられるのが、英国のCWC(Cabot Watch Company)社が製造する「CWC G10」です。
CWCは、1980年代に英国軍にG10を最初に納入したメーカーとして知られ、いわばMWCにとっての偉大な先達であり最大のライバルです。CWC G10は、現在も当時とほぼ変わらない仕様で製造されており、風防は強化アクリル、ムーブメントはETA社製のクオーツを搭載しています。
MWC G10BHが風防をサファイアクリスタルにアップグレードしているのに対し、CWCはオリジナルの雰囲気を重視しアクリル風防を継続採用している点が大きな違いです。価格はCWCの方がやや高価な傾向にあります。
もう一つの比較対象として、カナダのマラソン(Marathon)社の「General Purpose Quartz」があります。
このモデルは米軍の仕様(MIL-SPEC)に基づいて製造されており、ケース素材に軽量なファイバーシェルを採用している点が特徴です。MWCのステンレススチールケースと比較すると、軽量ですが質感は異なります。また、夜光に自発光するトリチウムガスチューブを採用したモデルもあり、暗闇での視認性は非常に高いです。

これらと比較すると、MWC G10BHは、オリジナルG10の歴史的デザインを踏襲しつつ、サファイア風防の採用など現代的な実用性を加味し、かつコストパフォーマンスにも優れたモデルと言えるでしょう。
「MWC G10BH」の実用性
ビジネスシーンに利用できるか
MWC G10BHは、ビジネスシーンでも十分に活用可能です。ただし、業種や職場の服装規定によっては注意が必要です。
例えば、IT企業やクリエイティブ職、ビジネスカジュアルが浸透している職場であれば、そのシンプルで機能的なデザインは全く問題なく馴染むでしょう。むしろ、さりげないこだわりを感じさせるアイテムとして好印象を与える可能性もあります。NATOストラップの色を黒やグレー、ネイビーといった落ち着いたものにすれば、ジャケットスタイルにも自然にマッチします。
一方で、金融機関や公務員、厳格なスーツスタイルが求められる伝統的な企業においては、カジュアルな印象を与えるNATOストラップや、ミリタリーという背景が不向きと捉えられる可能性があります。その場合は、休日の私服や、よりリラックスしたビジネスシーンでの使用に留めておくのが賢明です。
重要な会議や商談の場では、よりドレッシーな腕時計を選ぶといった使い分けをすると良いでしょう。ケース径40mmというサイズは現代の腕時計としては標準的で、袖口の収まりも良好です。
長く利用するためのコツやメンテナンス方法
MWC G10BHは非常に堅牢な腕時計ですが、長く愛用するためにはいくつかの点に注意が必要です。
まず、心臓部であるクオーツムーブメントは、約5年で電池寿命を迎えます。電池が切れたまま長期間放置すると、電池から漏れた液体がムーブメントを損傷させる原因になるため、時計が止まったら早めに電池交換を行いましょう。バッテリーハッチがあるため比較的交換は容易ですが、防水性能を維持するためには、時計店でパッキンの点検・交換も同時に依頼するのが理想です。
防水性能については、50m防水はあくまで日常生活防水の範囲と捉え、着用したままシャワーを浴びたり、泳いだりすることは避けるべきです。特にリューズがしっかりとねじ込まれているかは常に確認する習慣をつけましょう。
NATOストラップは汗や汚れが付着しやすいため、定期的に時計から外し、中性洗剤で優しく手洗いすると清潔に保てます。また、強い磁気を発するもの(スマートフォン、PCのスピーカー、バッグの留め金など)に近づけると、時間が狂う原因になるため、保管場所には注意が必要です。
オススメの購入方法と安く購入する方法
MWC G10BHを最も安心して購入する方法は、MWCの公式サイトまたは正規代理店のオンラインショップを利用することです。
\ MWCの時計を専門に扱うお店です /
公式サイトは海外からの発送となりますが、日本語にも対応しており、世界中に配送サービスを提供しています。正規代理店から購入するメリットは、国内での検品や保証、アフターサービスが受けられる安心感です。日本国内では、楽天市場などにMWCの専門店が出店しており、日本語での問い合わせもスムーズで、国内送料で手に入れることができます。
安く購入する方法としては、海外の正規ディーラーがセールを行うタイミングを狙うことが挙げられます。ブラックフライデーなどの大きなセールイベントでは、割引価格で提供されることがあります。ただし、海外からの個人輸入には、送料や関税が別途かかる場合があること、そして配送中のトラブルや初期不良時の対応が国内購入に比べて煩雑になるリスクがあることを理解しておく必要があります。
また、フリマアプリやオークションサイトで中古品を探すという方法もありますが、偽物や、見た目ではわからない内部の不具合を抱えた個体である可能性も否定できません。特にミリタリーウォッチは精巧な偽物も存在するため、信頼できる出品者から購入することが極めて重要です。
まとめ|「MWC G10BH」徹底レビュー
MWC G10BHは、ミリタリーウォッチの歴史と実用性、そして現代的なスペックが絶妙なバランスで融合した、非常にコストパフォーマンスの高い腕時計です。
軍用時計の直系であることを感じさせる無駄のないデザインと、サファイアクリスタル風防や長期寿命バッテリーといった日常使いでの安心感は、時計を「道具」として捉えるユーザーにとって大きな魅力となるでしょう。
ビジネスシーンでの活用はTPOを選ぶものの、NATOストラップを交換することで様々な表情を見せてくれるため、オンオフ問わず頼れる相棒となり得ます。初めて本格的なミリタリーウォッチを手にする方から、すでに何本も所有する愛好家まで、幅広くおすすめできる腕時計です。
ミリタリーという背景が持つストーリー性と、日々の使用に耐える堅牢性を、ぜひあなたの腕で体感してみてください。
メリット:軍用規格の信頼性と現代的なスペックを、優れたコストパフォーマンス
- 傷に強いサファイアクリスタル風防を標準装備
- 約5年の長いバッテリー寿命と交換が容易なバッテリーハッチ
- NATO軍採用モデルの系譜を継ぐ信頼性とストーリー性
- シンプルで飽きのこない、完成されたデザイン
- 同等スペックの他社製品と比較して高いコストパフォーマンス
デメリット:無骨なデザインで好みが分かれる
- 厳格なビジネスシーンには不向きな場合がある
- 防水性能はダイビングなどには対応していない
- ブランドの知名度が一般的に高くない
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