「G10」というコードネームは、英国国防省が兵士に支給した腕時計の代名詞として知られています。その伝統的なデザインを踏襲し、弱点を克服してスペックアップを果たしたのが「MWC G10/100UKG」です。
現在、英国国防省に納入されているモデルで、NATOストックナンバーも付与されている本物のミリタリーウォッチです。
傷に強いサファイアクリスタルや10年電池の採用、100m防水など、これまでのG10モデルから大幅にスペックアップされています。外観は変わりませんが中身がグレードアップされているにも関わらず、5万円以下で入手可能とコストパフォーマンスが高いのも特徴です。
さらに、ストラップは、NATO指定のアドミラルグレイの正式NATOストラップが付属するのも嬉しいポイントです。
この記事では、英国軍正式採用の「MWC G10/100UKG」の魅力とスペック、実用性を徹底レビューします。
「MWC G10/100UKG」の概要
MWC(Military Watch Company)は、1972年にスイスのチューリッヒで設立された、軍用時計を専門に手掛けるブランドです。創設以来、世界中の軍隊や警察、対テロ部隊などに腕時計を供給してきた実績を持ちます。
今回ご紹介する「G10/100UKG」は、現在、英国軍に正式採用されているモデルで、長年採用されてきた「G10」ウォッチをベースに、MWCが独自の改良を加えたハイスペックモデルです。オリジナルの雰囲気を残しつつ、防水性能や風防の素材、ムーブメントの性能を大幅に向上させており、プロフェッショナルな使用から日常使いまで幅広く対応する実用性を備えています。
項目 | スペック |
---|---|
耐久性 | 高(316Lステンレススチールケース、サファイアクリスタル) |
防水性 | 100m / 330ft |
耐磁性 | 不明 |
視認性 | 高(スーパールミノバ採用) |
操作性 | 良好 |
ムーブメント | Ronda 715li クォーツ |
動力の持ち時間 | 約10年 |
素材(ケース・裏蓋・風防) | ケース・裏蓋:316Lステンレススチール 風防:サファイアクリスタル |
ケース径 | 39mm(リューズ除く)、41mm(リューズ含む) |
ケース厚 | 12mm |
重量 | 58g |
ベルトの種類 | 18mm NATOストラップ ※グレー、ブラックの2種類が付属 |
- 英国軍が正式採用モデル
- NATOストックナンバーを取得したモデル
- 100m防水・10年電池と耐久性と実用性が高い
- コストパフォーマンスが高い
MWCの腕時計を採用する政府機関や部隊
MWCの「G10/100UKG」は、現在、英国国防省に正式に納入されているモデルとなり、NATOストックナンバーが付与されており、時計の裏蓋にその刻印がされています。
G10ウォッチは、特定のブランドのモデル名というよりも、もともとは英国国防省(MoD)が定める軍用腕時計の仕様、あるいはその備品コードを指す通称です。そのため、時代によって様々な時計ブランドがこの「G10」規格に準拠したモデルを製造し、軍に納入してきました。
最も代表的な採用組織は、英国軍です。陸軍、海軍、空軍の兵士に広く支給されました。
主な納入実績のあるブランドは以下の通りです。
- CWC(Cabot Watch Company):
- 1980年から2000年代後半まで、長きにわたり英国軍にG10ウォッチを供給した主要サプライヤー
- 陸軍の地上部隊を中心に、海軍(Royal Navy)、空軍(Royal Air Force / RAF)含め、推定で20万個以上が納入
- Precista:
- 1982年に、CWCと並行して英国軍にG10ウォッチを短期間納入した実績
- 製造数が非常に少ないため、コレクターの間で希少なモデル
- Pulsar(セイコーの子会社):
- 1990年代後半から英国軍の新たなサプライヤーに加わった
- 夜光塗料がトリチウムからルミノバに変更されるなどのアップデート
- MWC(Military Watch Company):
- MWCのG10ウォッチは、NATO軍に正式採用された実績
- NATOストックナンバー(NSN)を取得しているモデルもあり
- 英国軍以外にも、世界各国の軍隊や警察部隊へ供給
実戦で使用されたエピソード
G10モデルは、多くの実戦で実際に投入された実績があります。
フォークランド紛争(1982年)
英国とアルゼンチンの間で勃発したこの紛争は、G10ウォッチが本格的に実戦投入された代表的な例です。
アルゼンチンとイギリスの間で、南大西洋のフォークランド諸島(マルビナス諸島)の領有をめぐって勃発した戦争。アルゼンチンが島を占領したことに対し、イギリスが軍事行動を開始。約2か月の戦闘の末、イギリスが奪還に成功し終結。短期間ながらも空母・ミサイルなど現代兵器を用いた海空戦が展開された。
- 英国軍初のクオーツ時計:
- 1980年にCWCが納入を開始したG10は、英国軍に支給された初めてのクオーツ式腕時計
- 高精度で、機械式時計のように毎日ゼンマイを巻く必要がないため、過酷な戦場での信頼性は向上
- “Fatboy”の活躍:
- 初期のCWC製G10は、ムーブメントが厚く、ケースも厚みのある形状をしており、コレクターから「Fatboy」という愛称で呼ばれてる
- この「Fatboy」モデルや、同時期に支給されたPrecista製のG10が、フォークランド諸島に派遣された多くの英国兵によって使用され。
- RAFパイロットの証言:
- 当時、英国空軍(RAF)のニムロッド哨戒機に搭乗していたパイロットが、作戦中にCWC G10を着用していた
- 正確な時間管理が求められる哨戒飛行や、史上最長距離の爆撃作戦と言われた「ブラック・バック作戦」の支援任務など、航空作戦においてもG10が重要な役割を果たした
湾岸戦争(1991年)
イラクのクウェート侵攻を発端とする湾岸戦争でも、G10ウォッチは英国軍兵士の標準装備品として広く使用されました。
イラクのクウェート侵攻を受け、国連の決議に基づきアメリカを中心とする多国籍軍がイラクに対して武力行使を行った戦争。圧倒的な空爆と地上戦によりイラク軍は敗北し、クウェートは解放された。テレビ報道による「映像の戦争」としても知られ、近代戦の情報化を象徴する戦争となった。
- 大量供給:
- CWCは湾岸戦争に対応するため、1991年だけで約2万個のG10を生産・納入した
- 砂漠地帯の過酷な環境下で戦う兵士たちを支えた
- 特殊部隊での使用
- 英国の特殊部隊であるSAS(特殊空挺部隊)やSBS(特殊舟艇部隊)の隊員も、作戦行動中にG10を着用
これらのエピソードから、G10ウォッチが単なる時を知るための道具ではなく、いかなる状況下でも兵士の任務遂行を支える、信頼性の高い「計器」として機能してきた
生産国とその歴史的背景
MWCは1972年にスイスのチューリッヒで設立されました。
製造は、時計産業の中心地であるスイスと、同じく精密機械工業で名高いドイツで行われています。スイス製時計の歴史は、その品質、精度、信頼性において世界最高水準とされています。MWCの時計は、このスイス時計製造の伝統的な技術と、ドイツ製品にみられる質実剛健な設計思想を受け継いでおり、ミリタリーウォッチとして求められる高い基準を満たしています。
「MWC G10/100UKG」の特徴と機能
- G10/100UKG(100m防水、サファイア風防、10年バッテリー搭載のハイスペックモデル)
項目 | スペック |
---|---|
耐久性 | 高(316Lステンレススチールケース、サファイアクリスタル) |
防水性 | 100m / 330ft |
耐磁性 | 不明 |
視認性 | 高(スーパールミノバ採用) |
操作性 | 良好 |
ムーブメント | Ronda 715li クォーツ |
動力の持ち時間 | 約10年 |
素材(ケース・裏蓋・風防) | ケース・裏蓋:316Lステンレススチール 風防:サファイアクリスタル |
ケース径 | 39mm(リューズ除く)、41mm(リューズ含む) |
ケース厚 | 12mm |
重量 | 58g |
ベルトの種類 | 18mm NATOストラップ ※グレー、ブラックの2種類が付属 |
MWC G10/100UKGは、伝統的な英国軍G10のデザインをベースに、防水性能を100mまで高め、風防には傷に強いサファイアクリスタルを採用しています。心臓部には10年間の長寿命バッテリーを誇るスイス製クォーツムーブメントを搭載し、メンテナンスの手間を大幅に削減。ミリタリーウォッチの堅牢性と現代的な実用性を見事に両立させたモデルです。
- 英国軍G10のDNAを受け継ぐデザイン
- 現代基準にアップデートされた圧倒的な堅牢性
- 10年駆動の高性能クォーツムーブメント
英国軍正式採用のモデル
この時計の最大の魅力は、英国国防省に正式に納入されているモデルであるという点です。
これまで英国軍に供給されていたG10ウォッチの普遍的なデザインを受け継ぎ、中身を大幅にグレードアップさせ堅牢性と実用性が大幅にアップしています。
視認性を最優先したシンプルなアラビア数字のインデックス、夜光塗料が施された時分針、そしてつや消し加工が施されたステンレススチールケースは、まさにミリタリーウォッチの王道と言えるでしょう。
一方で、MWCはラグ(ベルト取り付け部)を固定式のバーにすることで、激しい活動でも時計が脱落するリスクを低減しています。また、ケースサイズは現代的な39mmとなっており、腕への収まりも良好です。NATOストラップとの組み合わせは、機能的でありながらファッション性も高く、様々なスタイルに合わせやすいというメリットも持ち合わせています。
現代基準にアップデートされた圧倒的な堅牢性
G10/100UKGがオリジナルのG10と一線を画すのが、その圧倒的な堅牢性です。
まず、防水性能は50mから100mへと強化され、ねじ込み式のリューズと裏蓋が採用されました。これにより、汗や雨はもちろん、水辺での活動にも安心して使用できます。
そして、風防には高級腕時計にも使われるサファイアクリスタルを搭載。一般的なミネラルガラスに比べて遥かに傷がつきにくく、過酷な環境でもクリアな視認性を長期間保つことができます。
ケース素材には医療用グレードの316Lステンレススチールが使われており、耐久性、耐食性にも優れています。まさに「現代のツールウォッチ」としてふさわしいスペックです。
10年駆動の高性能クォーツムーブメント
心臓部には、スイスのRonda社製「715li」クォーツムーブメントを搭載しています。
このムーブメントの最大の特徴は、約10年という驚異的なバッテリー寿命です。一般的なクォーツ時計が2~3年で電池交換が必要になるのに対し、G10/100UKGは頻繁なメンテナンスを必要としません。これは、いざという時に時計が止まっているというリスクを大幅に減らすことにつながり、ミリタリーウォッチとしての信頼性を高めています。
また、クォーツ式ならではの高い精度と、衝撃への強さも大きなメリットです。機械式時計のような手巻きや時刻合わせの手間もなく、いつでも正確な時間を知ることができる実用性は、多忙な現代人にとって非常に魅力的です。
「MWC G10/100UKG」と他モデルの腕時計との比較
同一ブランドの他モデルとの比較
MWCのG10シリーズには、G10/100UKG以外にもいくつかのバリエーションが存在します。最もスタンダードなモデルが「G10BH」です。
G10BHは、防水性能が50m、風防が強化ミネラルガラスとなっており、ムーブメントも標準的なバッテリー寿命(約3年)のものを搭載しています。価格はG10/100UKGよりも手頃で、オリジナルのG10に近いスペックを求めるユーザーに適しています。G10BHと比較すると、G10/100UKGは、価格こそ上がりますが、100m防水、サファイア風防、10年バッテリーという3つの大きなアップグレードが施されています。
日常使いでの安心感や、長期間にわたるメンテナンスフリーの利便性を重視するならば、G10/100UKGの優位性は明らかです。特に、傷がつきにくいサファイア風防は、時計を綺麗な状態で長く使いたいと考えるユーザーにとって非常に価値のある仕様です。

また、MWCには「GG-W-113」シリーズのような、アメリカ軍のスペックをベースにした自動巻きモデルも存在します。
こちらは機械式時計ならではの運針の滑らかさや、電池を必要としないという魅力がありますが、定期的なオーバーホールが必要であり、衝撃にも比較的弱いという側面も持ちます。精度やメンテナンス性を重視し、究極の実用性を求めるならクォーツ式のG10/100UKGに軍配が上がると言えるでしょう。
他社の類似モデルとの比較
ミリタリーウォッチの世界には、MWC G10/100UKGとしばしば比較される強力なライバルが存在します。その筆頭が、英国軍へのG10納入実績を持つ「CWC(Cabot Watch Company)」のG10です。
CWC G10は、実際に軍に採用されていたという「本物」のストーリーを持つ点が最大の魅力です。デザインも非常にクラシックで、歴史的な背景を重視するファンからの支持は絶大です。しかし、スペック面では50m防水、アクリル風防(またはミネラルガラス)と、MWC G10/100UKGに比べて見劣りする部分もあります。価格もCWCの方が高価な傾向にあり、純粋なツールとしてのコストパフォーマンスではMWCに分があります。
もう一つの比較対象として挙げられるのが、米軍やカナダ軍に納入実績のある「Marathon(マラソン)」のジェネラル・パーパス・ウォッチです。Marathonのモデルは、自発光するトリチウム・ガスチューブを採用している点が大きな特徴で、夜間の視認性においてはスーパールミノバを採用するMWCを凌駕します。また、軽量なコンポジット樹脂ケースのモデルがあるなど、独自の魅力を持っています。
ただし、デザインの好みは分かれる可能性があり、価格帯もMWCより少し上のレンジになります。これらのライバルと比較した時、MWC G10/100UKGの強みは「伝統的なデザイン、現代的なハイスペック、そして優れたコストパフォーマンス」の三拍子が揃っている点にあると言えるでしょう。

「MWC G10/100UKG」の実用性
ビジネスシーンに利用できるか
結論から言うと、MWC G10/100UKGはビジネスシーンでも利用可能ですが、業種や服装によっては注意が必要です。
この時計の持つシンプルで機能的なデザインは、悪目立ちすることがなく、現代の標準的な39mmというケースサイズもスーツの袖口に収まりやすいでしょう。特に、ビジネスカジュアルやオフィスカジュアルが推奨される職場であれば、全く問題なく馴染みます。
ただし、標準で装着されているNATOストラップは、どうしてもカジュアルでミリタリー色が強い印象を与えてしまいます。よりフォーマルな雰囲気が求められる場面では、ストラップを交換するのがおすすめです。例えば、黒やダークブラウンのレザーベルトに交換するだけで、時計の印象はぐっと引き締まり、ドレッシーな雰囲気を演出できます。また、社外品のステンレススチールブレスレットを合わせるのも良いでしょう。
このように、ストラップ一本でオンとオフの切り替えが簡単にできるのも、この時計の魅力の一つです。
長く利用するためのコツやメンテナンス方法
MWC G10/100UKGを長く愛用するためには、いくつかの簡単なメンテナンスを心がけることが大切です。
まず、クォーツムーブメントは基本的に頑丈ですが、強い磁気には弱いため、スマートフォンやパソコンのスピーカー、バッグの留め金など、磁気を発するものに長時間近づけないようにしましょう。時計が磁気を帯びると、時間が遅れたり進んだりする原因になります。
また、使用後は、ケースや風防についた汗や汚れを柔らかい布で拭き取る習慣をつけることで、金属の腐食や劣化を防ぐことができます。標準のNATOストラップはナイロン製なので、汚れたら中性洗剤で手洗いすることが可能です。最も重要なメンテナンスは、
約10年に一度のバッテリー交換です。その際は、時計店で防水性能を維持するためのパッキン(ガスケット)も同時に交換してもらうことを強く推奨します。これを怠ると、せっかくの100m防水性能が損なわれてしまう可能性があるため、必ず専門家に依頼しましょう。
オススメの購入方法と安く購入する方法
MWC G10/100UKGを購入する最も安心な方法は、日本の正規代理店やMWCの公式サイトを利用することです。
正規店で購入するメリットは、何よりも保証とアフターサービスが充実している点にあります。万が一の初期不良や、将来的な修理の際に、スムーズな対応が期待できます。また、製品に関する疑問点なども気軽に問い合わせることができるため、初めてミリタリーウォッチを購入する方でも安心です。
\ MWCの時計を専門に扱うお店です /
一方で、少しでも安く手に入れたい場合は、いくつかの方法が考えられます。
一つは、並行輸入品を扱うオンラインストアを利用する方法です。正規代理店を通さない分、価格が安く設定されていることがあります。ただし、店舗独自の保証となる場合が多く、修理対応などに違いがあるため、購入前によく確認する必要があります。
また、海外のオンラインマーケットプレイスから直接購入する方法もありますが、送料や関税、配送中のトラブルなどのリスクも考慮しなければなりません。中古品を探すという選択肢もありますが、G10/100UKGは比較的新しいモデルのため、流通量はまだ少ないかもしれません。どの方法を選ぶにしても、信頼できる販売店から購入することが最も重要です。
まとめ|「MWC G10/100UKG」徹底レビュー
この記事では、MWC G10/100UKGについて、その歴史からスペック、他モデルとの比較まで詳しく解説してきました。
この時計は、英国軍G10という歴史的なデザインをリスペクトしつつ、100m防水、サファイア風防、10年バッテリーという現代のツールウォッチに求められる要素を高いレベルで満たした、非常にバランスの取れた腕時計です。
過酷な環境下での信頼性と、日常使いでの利便性を両立しており、まさに「究極の実用時計」と呼ぶにふさわしい仕上がりと言えるでしょう。ミリタリーウォッチの入門機として、また、気兼ねなく使えるセカンドウォッチとして、あらゆるユーザーにおすすめできる傑作です。
メリット:英国軍に正式採用された実績がある
- 英国軍の正式採用モデル、NATOストックナンバー付与
- 100m防水とねじ込み式リューズによる高い信頼性
- 傷に強く視認性の高いサファイアクリスタル風防
- 約10年間電池交換が不要な高性能クォーツムーブメント
- 同等スペックの他社製品と比較して高いコストパフォーマンス
デメリット:ブランドの知名度が高くない
- ブランドの知名度が一般的に高くない
- 標準のNATOストラップはフォーマルな場に不向き
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