沈黙の艦隊 かわぐちかいじ

作品名
沈黙の艦隊 全32巻
作者
かわぐちかいじ
連載誌
モーニング
連載日
1988年〜1996年
出版社
講談社

沈黙の艦隊のあらすじ

沈黙の艦隊は、ジパングや空母いぶきの作者かわぐちかいじの描く潜水艦が主役の漫画。
日米共同で極秘裏に建造された原子力潜水艦。その艦長の海江田四郎と乗組員が、原子力潜水艦に乗り込み訓練を行っている最中に突然、独立戦闘国家「やまと」を宣言し行方をくらます。その後、核弾頭搭載魚雷をちらつかせた原子力潜水艦を武器にアメリカ、ロシアなど世界を敵に回し対抗する。全世界を巻き込んで、核兵器の存在意義を問うことになる。

沈黙の艦隊のミリタリー的見どころ

ミリタリー要素満載の沈黙の艦隊の見どころをいくつか紹介します。ネタバレ要素も少しだけあります。

潜水艦にひたすら詳しくなれる

沈黙の艦隊を読むと誰よりも潜水艦に詳しくなれます。ダウントリム、アップトリムとかやたらと潜水艦の専門用語が作中に出てくるので、沈黙の艦隊で潜水艦の専門用語や海戦の専門用語は覚えました。

設定・描写はとてもリアル、潜水艦戦なんて見たことも聞いたこともありませんでしたが、そのリアリティーが伝わってきます。

自衛隊が大活躍する

沈黙の艦隊には、東西冷戦時代の各国兵器、特に艦隊や潜水艦などの海軍兵器が多く登場します。各国のリアリティーに富んだ戦闘シーンはミリタリーマニア必見です。特に自衛隊の潜水艦や護衛艦が活躍するシーンが多く、自衛隊好きにはたまりません。

ただ銃火器の描写は、自衛隊がM16らしきものを持っていたりと以外と曖昧です。沈黙の艦隊以降のかわぐちかいじ漫画は、その辺の描写はリアルになってきてます。

国・政治の戦いが熱い

かわぐちかいじの描く政治家はカッコいい!!
自衛隊の迅速な対応や日本政府の各国を相手にした素晴らしい外交力、総理大臣の機転の効いた対応など、実際もこうであったらいいなぁと思うある意味理想像が描かれているのが痛快です。実際はこう上手くは行かないでしょうが。

当時の時代を背景とした政治の戦いも濃密に描かれている社会派な漫画でもあります。東西冷戦時代の社会情勢や世界地理の勉強にもなります。

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沈黙の艦隊に登場する兵器

沈黙の艦隊に登場する兵器、ミリタリー要素をいくつか紹介します。

設定年代 1980年代 冷戦時代
舞台 日本 アメリカ ロシア 世界各地
カテゴリー ミリタリー
登場兵器 銃器:
64式小銃 M16

艦船:
海上自衛隊 護衛艦 潜水艦
米海軍 原子力空母 原子力潜水艦 戦艦 戦闘機
ソ連軍 原子力潜水艦

登場部隊 自衛隊 米軍 第七艦隊 ソビエト連邦軍

そうりゅう型潜水艦

「沈黙の艦隊」の作中には登場しませんが、2017年現在の自衛隊に配備される最新の潜水艦がそうりゅう型潜水艦。通常動力型の潜水艦です。沈黙の艦隊の「やまと」の様な原子力潜水艦の配備予定も開発予定も自衛隊にはありません。

そうりゅう型潜水艦の最大の特徴は、自衛隊初の非大気依存推進(AIP)を搭載した潜水艦である点。これにより2週間ほどの連続潜行が可能に。ただしAIPに使うスターリング機関は低出力のため、戦闘時はディーゼルエレクトリックが必須。

そうりゅう型潜水艦の11番艦以降は、上記のAIPを廃止し世界に先駆けリチウムイオン電池搭載型となります。これにより蓄電容量を飛躍的に増やすことができ、長時間の潜行が可能になります。

そうりゅう型潜水艦 諸元

排水量 基準排水量:2,900トン
水中排水量:4,200トン
全長 84.0m
速力 20ノット
潜行深度 非公開
乗員 65名
兵装 魚雷発射管×6門
非大気依存推進(AIP)


出典:http://www.mod.go.jp

そうりゅう型潜水艦の1番艦〜10番艦に搭載される。

スターリング機関により、液体酸素と少量の燃料で機関を稼働させることで、従来のディーゼルエンジンの様に浮上し酸素を取り込んでエンジンを稼働させることなく、潜行したまま機関を駆動 or 蓄電池の充電することが可能。

欠点は、出力が極端に少ない点。速力にして4〜5ノットほどしか出ない。そのため、従来のディーゼルエンジン + 蓄電池の補助的な役割となる。

ただ、従来から大幅に連続潜行時間を伸ばすことが可能となった。

リチウムイオン電池搭載


出典:http://www.mod.go.jp

そうりゅう型潜水艦の11番艦以降に搭載される。

主蓄電池を従来の鉛蓄電池から、リチウムイオン電池に変わる。これにより高速航行可能な連続潜行時間を大幅に増やすことが可能となる。

リチウムイオン電池のメリットは、
・充電容量がこれまでの2倍以上
・高速充電可能
・水素ガス発生の危険がない

ただ、リチウムイオン電池にも欠点はあり、某スマホのように発熱発火の危険性があります。

そうりゅう型潜水艦に搭載されるリチウムイオン電池は、国産のGSユアサ製。国際宇宙ステーションISSやJAXAの探査機こうのとりにも搭載された実績のあるメーカーです。

ちなみに通常動力型の潜水艦分野では日本の技術は世界トップクラスです。アメリカ軍やロシア軍は原子力潜水艦がメイン(アメリカ軍は原潜しか作ってない)なので、通常動力型の潜水艦の技術では日本を超える国はありません。

ロサンゼルス級原子力潜水艦

その名の通り、原子炉を動力源とする潜水艦。アメリカ海軍の原子力潜水艦には、核弾道ミサイルを搭載する戦略ミサイル原子力潜水艦と対地対艦用の攻撃型原子力潜水艦の2種類があります。

この、ロサンゼルス級原子力潜水艦は、沈黙の艦隊にも多数登場するアメリカ海軍の攻撃型原子力潜水艦。原子力潜水艦については「沈黙の艦隊」を読むとむちゃくちゃ詳しくなります。

基本的に燃料補給が要らず(潤滑油等は除く)、艦内の酸素も原子炉の発電による有り余る電力で海水から電気分解で生成することができるため、数ヶ月海の中に潜り続けることが可能。

ロサンゼルス級原子力潜水艦 諸元

排水量 水中排水量:約7,000トン
全長 109.73m
速力 31ノット
潜行深度 457m
乗員 約130名
兵装 Mk 67 533mm水圧式魚雷発射管×4門
トマホーク SLCM用VLS×12基

ニミッツ級原子力空母

アメリカ海軍の原子力空母で、世界で初めて量産された原子力空母であり、1番艦から10番艦まであります。沈黙の艦隊にも3番艦のカール・ヴィンソンが登場します。

その艦の大きさは、水面からの高さがビル20階相当、乗員は5,000人以上、原子炉2基の発電量は約200メガワット。燃料・弾薬の搭載量も大幅に増強され、無補給で最大16日の作戦行動が可能。船というより城といった感じです。

ニミッツ級原子力空母 諸元

満載排水量 100,000トン以上
全長 330〜333 m
速力 30ノット以上
乗員 約5,000名
兵装 ファランクス CIWS ×2〜3
シースパロー短SAM 8連装発射機 ×2
RAM近SAM 21連装発射機 ×2
艦載機 90機

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